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移り住むこと

2026年6月21日

「とにかく暖かいところじゃないと」寒がりの妻はそう言いました。「瀬戸内の方は暖かいらしいよ」楽観主義者の私が返します。二人揃って仕事をやめて、まだ見ぬ新天地をレンタカーのヴィッツで探し始めたときの話です。今から考えるといささか無茶な気もしますが、最強タッグの夫婦二人が揃っていればどこでもやっていけると根拠なく確信していました(自己肯定感高め)。

車中泊1ヶ月という長い旅のなかでたまたま男木島を訪れ、たまたま移住相談窓口を開いている男木島図書館に出会って、たまたまあった空き家に居を構えてもう10年になります。その間に、ゴミが満杯だった納屋はお店に生まれ変わり、冬寒いボットントイレとタイル張りのお風呂は猪処理場に変貌を遂げました。

私たちがこの男木島へ来たことも、小麦や野菜を育て、猪を獲り、鶏を飼うようになったことも、すべては偶然の産物です。が、人生とはしょせんそのようなもの。スローな島暮らしとは縁遠い日々ですが、ひとつの「正解」に固執することなくオープンな姿勢で日々変化する状況に対処していくことはゴキゲンでクリエイティブな過ごし方だと感じています。

「移住」は大きな決断ですが、やる前から考えすぎても仕方がありません。事前の情報収集や分析をどれだけしても、実際にやってみないと分からないことがたくさんあるからです。なので問いは「どこに住むか」ではなく、「どのように暮らしたいか」であるべきです。最初から100点の場所はありません。自分たちの手でその場所を自分たちなりの100点に近づけていくことを「暮らす」と呼びたいと私は思います。その日々の積み重ねの結果を「思えば遠くに来たもんだ」と振り返るのも良いものです。例えばタイムマシーンで10年前に戻って過去の自分に今の状況を話したときに「まぁ妥当だよね」って言われるのはつまらないです。できれば腰を抜かすぐらい驚かせてやりたいものです。そして10年後の自分は今の自分を驚かせる存在になっていたいと思います。